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大阪工業技術専門学校の先生紹介 ~非常勤講師 木村貞基先生~2022.02.15

大阪工業技術専門学校
https://www.oct.ac.jp/

大阪工業技術専門学校とは

大阪工業技術専門学校(OCT)では、第一線の現場・社会で活躍できる「真の仕事力」を備えた人材を育成しています。
教員は、現在も第一線で活躍したり、プロとしてキャリアを積んできたりしているスペシャリストばかりです。
現場での経験に基づいたノウハウで、知識を詰め込むのではなく、自分の頭で考えることを教えていきます。

社会に出て、たくさんの課題や問題にぶつかったとき、その課題を突破する問題解決力が必要になります。
専門性の高い技術や知識はもちろん大切ですが、最も重点を置いていることは、自ら問題を発見し、解決する力です。
学生自身がいろいろな方向から考え、試行錯誤をしながら自ら答えを導きだし解決する、これはOCTが長年大切にしていることです。

非常勤講師 木村貞基先生

この記事では、本校の先生の1人、木村貞基先生についてご紹介します。
木村先生は、本校の建築学科Ⅱ部を平成9年に卒業し、現在はアルファ建築設計事務所で働きながら、本校の校友会常任理事と非常勤講師を務めています。
講義のコンセプトは「社会とリアルにリンク」、キーワードは「建築を俯瞰する」で、建築、都市、経営をそれぞれ理解し、「建築を総合的に扱う力」を養うことを目指して指導を行っています。

そんな木村先生が、令和3年に、第40回「大阪都市景観建築賞」(*)の大阪府知事賞を受賞されました!
以下では、受賞作品「箕面滝道 橋本亭」の設計コンセプトについてお話を聞きました。

(*)大阪都市景観建築賞とは
大阪都市景観建築賞は、大阪府において、周辺景観の向上に資し、かつ、景観上優れた建物や建物を中心としたまちなみを表彰する賞(愛称「大阪まちなみ賞」)です。
本年度は、令和3年7月1日から7月31日までの1か月間、広く一般に推薦が募集されたところ、117件に及ぶ推薦があったとのことでした。
これらの建物を中心としたまちなみについて、建築、都市計画、造園、デザイン、報道等の各分野の専門家8名で構成されている審査委員会(審査委員長:近畿大学総合社会学部総合社会学科環境・まちづくり系専攻教授 久隆浩)が審査し、大阪府知事賞、大阪市長賞、審査員特別賞、緑化賞、建築サイン・アート賞、奨励賞(5作品)を決定しました。
(出所:大阪市「報道発表資料「第40回大阪都市景観建築賞(愛称 大阪まちなみ賞)」の入賞作品が決定しました」(2022年1月20日閲覧)
https://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/toshikeikaku/0000553397.html)

木村先生に聞く「箕面滝道 橋本亭」の設計コンセプト

(出所:「第40回 愛称 大阪まちなみ賞 大阪都市景観建築賞 受賞作品」(2022年1月20日閲覧)https://www.city.osaka.lg.jp/toshikeikaku/cmsfiles/contents/0000553/553482/the40th_osakamachinamiaward_works.pdf)

明治43年(1910年)箕面滝道の一の橋のたもとに築造された旧・橋本亭(旅館)は、明治情緒溢れるたたずまいで滝道の賑わいの中心として親しまれてきました。しかし、平成28年(2016年)に発生した自然災害(崖崩れ)により、巨大な岩が建物背面を直撃し、建物は全面撤去となりました。旧・橋本亭は100年以上にわたって多くの人々に親しまれ、市条例に基づく都市景観形成建築物として箕面公園の歴史を見守ってきた大切な観光拠点であることや、市民からも再築を望む声が多かったことから、旧・橋本亭の復元を計画しました。

現在の法令上、建物規模や構造的な制限により完全復元は困難であったため、解体撤去時に保存された部材を一部再利用し、旧・橋本亭の外観デザインを踏襲しつつも、新たに箕面川に面したオープンスペースを設け、箕面の自然と調和できる開放的な交流空間を計画するなど、新たな要素を加えて明治情緒あふれる外観を再定義・再構築しました。その後、令和3年に、新生・橋本亭は、景観法に基づく景観重要建造物に指定されています。

阪急箕面駅から箕面大滝にむかい5分ほど歩いたところにある橋本亭。ここは83.8haを誇る「明治の森箕面国定公園(国定公園)」の入口にあたり、豊かな森林と清流に囲まれた場所であるため、如何に緑を取り入れるかではなく、如何に豊かな自然景観の中に、違和感なく溶け込むことができるかに注力を注ぎました。

建物は、周囲の森林を邪魔することなく、新たに計画した川べりのデッキも、腰壁など視線を阻害する要素を排除することで、かつて、緑に溶け込んでいた旧・橋本亭が、今も変わらぬ佇まいでそこにあると感じられるよう配慮しています。

また、周囲の森林とともに時を重ね馴染み、かつて旧・橋本亭に住み着いていたヤモリが再び居を構えてくれることを願い、敢えて木造建築を採用し、できるかぎり旧・橋本亭の部材の再利用を目指しました。特に、独特の歪みある貴重なレトロガラスの再利用に成功し、旧・橋本亭で最も特徴的であった対岸からの「一面のガラス格子建具群」の景観、いわば木製カーテンウォールを蘇らせることができました。このほか、「橋本亭」の金物サインや、結霜ガラス、吊り灯籠のほか、多くの木製建具を再生し、建物の命と情景を引き継ぐことも実現できました。

第40回大阪都市景観建築賞において、私が設計監理をした「箕面滝道 橋本亭」が、大阪府知事賞を受賞することになりました。あらためて身の引き締まる思いです。
この受賞で、誠に微力ながら、都市景観と建築、まちづくりを考える新たな視点の一つになれば、と小さく願うところです。

木村先生からひとこと

大阪工業技術専門学校に通っていたころは、働きながらの通学、いわゆる「ながら勉学」だったので、時間との闘いでした。
少ない時間でいかに効率よく知識を習得させるか、毎日考えていました。

最近になっていろんな分野で「量より質」と言われていますが、当時はまだまだ量が重視される時代でした。
大阪工業技術専門学校では、実際の行政様、企業様からの、リアルな建築設計依頼を課題として行う授業があり、在学中に、経験する設計業務を通して本気で質を考える機会を得たことで、今の私の建築設計業務の質に結びついていると確信しています。

2022.02.15

大阪工業技術専門学校
大阪市北区天満1-8-24