専修学校
関係者向け

#知る専コラム

「専門学校の先生って?」―調査から見えてきた特徴と魅力植上 一希(福岡大学人文学部 教授)

専門学校の教育を担い、多くの職業人を社会に輩出しているのが専門学校の先生たちです。全国に約2800 校ある専門学校では、計約 15 万人(うち専任は約 3 万 7 千人)もの先生たちが、日々、学生の学びを支えています。

しかし、その実態は社会的に認知されておらず、学問的にも検討が進んでいるとは言えません。そうした状況に問題意識をもって、数年前から私は仲間とともに専門学校の先生方へのインタビュー調査を行ってきました。一人ひとりの語りには、専門学校の先生になるまでのキャリアや、専門学校で教えることに対する喜び、苦労、誇りがあり、魅了されてきました。ここでは、それらの語りから見えてきた専門学校の先生の特徴のいくつかについて、研究の観点から紹介していきましょう。

第 1 の特徴は、キャリアが多様であることです。小中学校の先生なら、多くは大学の教員養成課程を経て教員免許を取得。卒業してすぐに「先生」として働き始めるのが一般的です。対照的に、専門学校の先生には、統一的な教員免許や養成課程がないため、学歴も様々ですし、大抵の人は「先生」とは別の職業を経ています。

それゆえ、それぞれが持つ、専門性や、専門学校の先生としての意識にも大きな幅があります。それが第 2 の特徴です。たとえば、業界経験という点では、様々な職場を経てきたベテランもいれば、ほとんど業界経験がないまま専門学校の先生になった人もいます。意識面でも、「専門学校の先生になりたい」と考えて先生になった人は少なく、今後のキャリアプランとして専門学校の先生を長く続けることを希望する人もいれば、一時的なキャリアとしてとらえている人もいます。

こうした、キャリアの多様性がもたらす、専門性や意識の多様性こそ、専門学校の先生たちの特徴であり魅力だと私はとらえていますが、一方で共通点もあります。それは、職業のプロフェッショナルとして、その職業を目指す学生たちに向き合っていることです。そして、私がお話を聞いてきた先生たちの多くは、そのこと自体に大きなやりがいを感じていました。ある美容系専門学校の先生の語りを一例として紹介します。

「何よりも、私が生きてきた業界に魅力を感じてくれて、多くの人が学んでいる。そのこと自体がとてもうれしい。だからこそ、将来、彼女たちが、少しでも長くプロとして活躍できるように、私の経験や技術や知恵を伝えていきたいんです。」

もちろん、職業教育ゆえの苦労や難しさを感じて悩む先生も多くいます。職業人だからといって必ずしも優れた先生になれるわけでもないでしょう。それでも、自らが携わってきた職業世界の希望や魅力を学生たちと分かち合うことができるという喜びは、専門学校の先生ならではの醍醐味と言えるでしょう。一人の教員として、私は羨ましさも感じています。

(メールマガジン第3号(2021.5.21配信)に掲載)