専門学校の情報公開の現状と課題菅野 国弘(全国専修学校各種学校総連合会 事務局長)
専門学校の情報公開については、平成19年からは学校教育法第43条(情報の積極的な提供)及び同法施行規則第66条(自己評価の結果の公表)が義務として、同法施行規則第67条(学校関係者評価の結果の公表)が努力義務として規定されてきました。
しかし、文部科学大臣認定制度「職業実践専門課程」の制度創設前の平成25年時点で、「情報の積極的な提供(情報公開)」が全体の19.7%(文部科学省「私立高等学校等の実態調査」より)で、制度創設後も大きな実施率の伸びは見られませんでした。
ところが、「高等教育の修学支援新制度」について、同制度の確認要件を規定する大学等における修学の支援に関する法律施行規則では、公開を義務づける情報を具体的に列挙して、インターネットの利用など公表を求めています。公費を投入するため説明責任の観点から改めて規定したものと言えます。
本制度創設もあり、令和元年度の制度創設当初の「情報公開」の実施率は全体の75.2%と続伸しています(文部科学省「私立高等学校等の実態調査」より)。
もちろん、専門学校の情報として、進学希望者・希望者の保護者、希望者在籍校の進路指導担当教員等へは「独自の取組及び特色ある教育等」、卒業者の採用希望企業及び企業全般等の人事担当者等へは「個別の育成人材像、教育内容及び学修成果等」等が重要です。ただし、学校として情報公開を進める上での課題、例えば、内容の質、発信・公開の質及び改善の仕組みも事前に検討の上、取組を促進することが必要と考えます。
情報の「内容の質」に関しては、適切かつ正確なエビデンスに基づく真正性、掲載・更新の頻度が一定期間以内の最新性、対象の需要に応じた内容の的確性、項目に応じた一定期間のデータ記録の継続性、個人情報・著作権など個人の権利を保護している法律の遵法性等が考えられます。
また、情報の「発信・公開の質」に関しては、広報宣伝的かつ注目度を高めた情報を広範な対象に発信・公開する方法、詳細かつ特別な情報を特定の対象に発信・公開する方法、対象(個人情報)の取得方法の適切性・遵法性、対象の入手の希望時期の確認と実際の適時性の確保等が重要となります。
一方、情報の「発信・公開の改善の仕組み」に関しては、学内の情報公開の基準との適合性の確認と公開内容の見直し、情報の公開日と更新日の設定・確認及び運用その他時期的な対応、学内からの意見・相談の対応体制等の整備と公開内容の見直し、外部からの相談窓口の整備と公開内容・方法の見直し等が考えられます。
情報公開を始めてから負担感を感じることがないよう、上記のような様々な課題を事前に検討し、学校側が第三者から誤解を受けることがないように情報公開を進めていただきたいと思います。
(メールマガジン第8号(2021.8.2配信)に掲載)