専修学校
関係者向け

#知る専コラム

中小企業支援機関を活用した専修学校と中小企業との連携全国中小企業団体中央会
事務局次長・労働政策部長 佐久間一浩

 我が国において、昨年春先から始まった新型コロナウイルス感染症がさらに変異型へと形を変化させながら拡大している中で、東京オリンピック・パラリンピックが開催され、アスリートの活躍により、数々の感動を私たちに与えてくれ、無事終了しました。まだまだ続くコロナ禍により、「不要不急の外出禁止」が各地において発令され、特に、飲食業やホテル・旅館業など、個人を対象とする業種では、大企業、中小企業を問わず来店される顧客が少なくなったことで、売上げが上がらず、経営に窮している事業者の方々が少なくありません。また、飲食業と取引のある食料品製造業や、ホテル・旅館業と取引のあるリネンサプライ業など、関連する事業者も大きな影響を被っています。最近では、景況感、売上、収益状況など、政府が発表する指標では、改善の動きもみられてきていますが、新型コロナウイルス感染症が拡大する以前の状態まで回復していません。早期に現行のワクチン接種が進むとともに、新たな国産のワクチンや治療薬の開発により、感染した場合であっても、安心して、私たちが普段の生活を営み、地域間の移動を遠慮することなく、国内、そしてグローバルに経済活動を行えるよう願うばかりです。

 中小企業は、一般的に労働分配率が高く、営業利益などの収益力が乏しいうえ、労働生産性が低い存在であるといわれています。確かに、マクロ的にみれば、有力な大企業に比べるとその傾向は顕著にあらわれています。しかし、地域の中小企業には、大企業と遜色ない、あるいはそれを凌ぐ、自己資本比率や流動比率、固定長期適合率などの安全性、利益率などの収益性、1人あたりの付加価値額や労働分配率などの生産性といった経営・財務比率が良く、また、独自の技術力、ノウハウ、サービスなどを有する、将来、楽しみな企業が多数存在しています。

 現在、我が国には、約358.9万者の企業(会社数+個人事業者数)があり、そのうち大企業は約1.1万社にすぎず、中小企業は約357.8万者で実に99.7%を占めています。また、大企業に働く従業員数は約1,458.8万人、中小企業は3,220.1万人で68.8%を占めています。

 大学生だけでなく、専修学校の生徒の皆さんが、卒業後、安定志向、給与水準、福利厚生等の働く上での環境から、「できれば大企業を選択したい。」という気持ちが強いことも事実だと思います。しかし、地域に根ざした中核企業、有力企業は、ほとんどが中小企業です。地方の中核企業、有力企業は、大企業との取引も多く、自分たちが独自に築き上げた世界水準の技術力を有する企業や国内シェアが高い企業もあります。地方の出身である専修学校の生徒の皆さんならば、地域の中核企業、有力企業の名前が一つ二つは、確実に頭に浮かんでくるのではないかと思います。

 私ども全国中小企業団体中央会は、昭和39年から、毎年約2万社の中小企業から回答を得て「中小企業労働実態調査報告書」(令和3年3月)をとりまとめていますが、令和2年度新規学卒者の採用充足状況をみると、高校卒では75.8%(前年比+2.4%)の充足率であり、分野別では「技術系」74.2%(同+2.7%)、「事務系」83.8%(同+2.4%)となりました。専門学校卒では、「全体」では88.7%(前年比+2.9%)、「技術系」で88.8%(同+4.1%)、「事務系」では88.2%(同△2.5%)となりました。短大(含高専)卒では90.9%(前年比+2.7%)で、「技術系」89.6%(同+3.9%)、「事務系」93.8%(同△0.1%)と最も高い充足率となりました。また、大学卒では82.1%(前年比+2.4%)、「技術系」78.6%(同+1.9%)、「事務系」86.7%(同+3.1%)でした。全体的に新規学卒者の採用に苦慮していることが伺えます。

 また、令和3年3月の新規学卒者の採用を予定していた事業所の割合を学卒別にみると、「高校卒」が全体の事業所の19.2%(前年比△3.4%)、「専門学校卒」が5.8%(同△1.5%)、「短大(含高専)卒」が3.5%(同△0.7%)、「大学卒」が11.0%(同△1.5%)となっていました。

 中小企業は、毎年定期的に新規学卒者の採用を行う事業所が多いわけではないので、採用予定事業所の比率は必然的に低くなる傾向がみられるのですが、大学卒、高校卒については、大学、高校などとのパイプはあっても人材を充足することができていません。ましてや専修学校については、事業者が大学や地域周辺の高校から採用していこうとする意識はあっても、専修学校から人材を求めていこうとする求人意識が乏しいのではないかと推察されます。つまり、技術・技能を有し、かつ、社会人にとって重要なコミュニケーション力、即戦力を有した専修学校の卒業生の求人は、地域の中核的中小企業と専修学校とのマッチングの在り方次第で、いかようにでも変化してくる余地があるといえます。地域の中小企業は、雇用吸収力の点でも有力な拠点となり、即戦力となる人材を求めています。大学卒をターゲットとしても、単に大学を卒業したというだけで、実務的な能力は入職後に育成することとなり、求職、求人ともにミス・マッチングの危険性が高い一方で、実践力、技術力等を有して即戦力となる要素の高い専修学校の卒業生は、有力な人材の宝庫といえるのです。

 地域の中小企業、もちろん大企業も地域に存在しておりますが、やはり対象になるのは数が多い中小企業になるわけです。中小企業は「人材確保」に高い意欲を有しています。専修学校は、技術・技能を習得させるだけでなく、有力で実績のある職業紹介事業者のように、企業を見いだし、生徒をマッチングさせていくことも一つの重要な役割です。そして、マッチングを図るための手段として、地域に根ざした商工会、商工会議所、あるいは、私ども都道府県に設置されている中央会やその会員である地域の業種別等組合にアプローチして、組合員企業の情報をつかんでいただくことが必要だと思います。

 中小企業の振興発展を支援する経済団体として、商工会議所、商工会、中小企業団体中央会があります。商工会議所は原則として市の区域に設立され、商工会は主に町村部に設立された支援機関です。商工会議所は、都市部に地域があり、国際的な活動など幅広い事業を展開しています。中小企業のうちでも、商工会の会員資格の大部分を占める小規模事業者(製造業では20人以下、商業・サービス業では、5人以下)数は、全体の84.9%、従業員数では22.3%を占めています。そして、中小企業団体中央会は、都道府県に一つずつあり、会員である事業協同組合、企業組合、商工組合、商店街振興組合などの中小企業組合2万3,597団体を会員とし、その組合の組合員企業は約230万者に上ります。これらの支援機関へアプローチをしていくことで、会員企業や会員組合を通じての個別組合員企業へのアプローチの方法を相談することが必要です。

 専修学校の強みは、世の中の職業、求人ニーズにいち早く応えられるような学科やコースを柔軟に設定することが可能なことです。そして、授業が具体的、かつ、実践的であることから、それぞれの職業に必要な専門的な知識や技能を学び、自身が将来何になりたいか、どういう人材になりたいかを共有する仲間ができます。それにより、一般社会で対応できるコミュニケーション能力、協調性、自主性、自己管理能力を養うことができます。企業のニーズに合った人材を養成するということでは、中小企業と専修学校は、学科のカリキュラムの編成や求人・求職相談のよりよいパートナーになると考えます。しかし、専修学校側の方では、企業から授業の講師の派遣を単発で依頼するなどが多く、それだけで企業との連携を図れたなどとするのは思い過ごしです。例えば、地域限定の就職合同説明会への参加や商工会議所と合同の研修を実施するといった、自己資金をあまり充当しないまま、「待ち」の姿勢が多く、従来から当該企業に就職させてきた、なじみの企業や、知合いの企業などに通年通りの求人を頼るだけの傾向があるようにも思えます。積極的に個別中小企業や中小企業支援機関にアプローチをしていただくことで、連携がさらに図られるのではないかと思います。

 このような見地において、例えば、地域の顔見知りの専修学校とともに、事業協同組合などの中小企業組合を設立し、共同で生徒の求職活動をしたり、先端技術であるVR、AR等を導入した共同カリキュラムを創造するといった方策も有効だと思います。中小企業組合を設立することは、組合の視点では、物品の共同購買や産学が連携した人材養成、情報提供といった共同事業を行うとともに、AI等を活用したオンライン授業の推進、DXに取り組むことで、自立的な専修学校同志の交流・連携による生産性を高めることが期待できると思います。さらに、中小企業団体中央会の視点では、会員の中小企業組合との組合間連携を図ることや、中小企業関係の補助事業の利用、職業紹介といった支援ができると考えます。このように、専修学校同士が連携して、連携体として考え得る工夫を取り組んだうえで、国や地方公共団体から公的資金を充当するよう、予算化を図ってもらう必要があるのではないでしょうか。

(メールマガジン第12号(2021.9.27配信)に掲載)