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#知る専コラム

専門学校教育から学ぶ
―職業とリアルに向き合う学びを通じた学ぶ意欲の回復佐藤昭宏(ベネッセ教育総合研究所 主任研究員)

全国に約2800校存在する専門学校には、毎年約27万人の学生が進学しており、依然、高校卒業者の主な進学先の1つとなっています。近年は、専修学校の質保証・向上に向けてより積極的な情報公開が求められるなど、社会に対する説明責任や学校の信頼向上に関する学校の取り組みもより充実してきています。一方で、そうした公開情報は、学校経営や教育を行う学校に関する内容に偏っており、専門学校への進学を検討している高校生が求める「現役学生は専門学校でどのように学び、どのような教育成果を得ているのか」「専門学校の卒業生がその後の仕事やキャリアの中でどのように評価され、活躍しているのか」といった具体的な学習実態やその後のキャリアに関する情報は、依然不足しています。そこで、研究者の方々や専門学校の先生方と一緒に、数年前から専門学校生や専門学校の卒業生に関する調査研究を重ねてきました。

そうした中で、他の学校種とは異なる専門学校ならではの教育の魅力を、いくつも発見してきました。その1つが、「職業人として社会に位置づくこと」を目指す教育を通じた学生の学ぶ意欲の回復です。

2017年にベネッセ教育総合研究所が専門学校生を対象に実施した『専門学校での学びと生活に関する実態調査』の、高校時代と専門学校時代の学習に対する意識を比較したところ、「出された宿題や課題はきちんとやる」(高校時代74.7%→現在88.1%)、「計画を立てて学ぶ」(高校時代31.9%→現在49.8%)などの項目でポイントが上昇し、「授業に関心・興味がもてなかった(もてない)」の項目でポイントが減少(高校時代46.9%→現在33.1%)していました。これらの結果から、高校時代に授業に興味関心を持てず意欲を失っていたが、専門学校進学後、その意欲を取り戻した学生が一定数存在することが確認されました。

専門学校は「就職に役立つ」、「職業に特化したスキルを学ぶ」教育機関としてイメージされることが多いですが、専門学校が教育を通じて実際に果たしている役割や機能からすると、前述したイメージはかなり狭く捉えられたものであると感じます。

職業を題材に社会とどう向き合い、その課題をどう読み解いていくか。そのために必要なリアリティ(具体性)や深度を伴った教育をどのように組織していくか。これからの時代に必要な実践知や市民的教養の育成という点で、高校や大学が専門学校の教育から学ぶべき点も多いのではないでしょうか。

(メールマガジン第21号(2022.2.7)に掲載)