中小企業の魅力とは向山理(東京商工会議所 人材・能力開発部 人材支援センター所長)
専門学校の皆様におかれましては、社会人として活躍できる専門性の高い実務能力をもった人材を輩出いただいており、この場をお借りして御礼申し上げます。
東京商工会議所は東京23区内の企業・団体など約8万の会員で構成される地域総合経済団体です。会員企業は中小企業中心ですが、約30校の専門学校の皆様にも会員になっていただいています。
私共の創立者であり、日本資本主義の父ともいわれる初代会頭・渋沢栄一は、商法講習所(現在の一橋大学)をはじめ多くの学校の創設に関わったことで知られていますが、教育に非常に熱心だったと言われています。
渋沢栄一は約500もの企業・団体の設立に関わりましたが、自ら立ち上げに関与した後、後任となる人材を育て、その人材に企業・団体を任せて、多くの事業に携わりました。ですので、人材育成、教育の重要性を強く感じていたのだと思います。
その意志を受け継ぎ、現在、東京商工会議所では、学校法人との連携事業、キャリア教育支援を行っています。専門学校、専門高校、大学などの学校、あるいは、東京都産業教育振興会をはじめとする団体など、多くの皆様にご協力をいただいて事業を実施しています。
中でも、就職活動の前、低年次の学生が参加するインターンシップ・職場体験プログラム「東商リレーションプログラム」には毎年100名以上の学生の方に参加いただいています。今年度からは、これまでの大学に加え、専門学校にも参画いただけるようにし、学生の皆さんに主に中小企業を実際に訪問していただき、ワークショップなどを経験できる機会を提供しています。
中小企業は、日本の企業の99.7%を占め、約7割を雇用しており、身近な存在であるものの、学生さんにとっては実態を知る機会が乏しく、遠い存在に思っている方もいらっしゃるかも知れません。
中小企業の魅力は、企業目線では、
「経営者と社員の距離が近く、部門間・チーム内の一体感も強い」
「顧客・社会のニーズにきめ細かく応じことができる対応力がある」
「経営者の決断次第で、スピード感があり、かつ柔軟な意思決定ができる」
などがあると思います。
これらは、実際に、変化の大きかったこの数年のコロナ禍でも発揮され、社内体制の整備のみならず、コロナに対応した製品・サービスをいち早く開発したといったことが多くの企業で見受けられました。
それぞれが独自の強みを持ち、会社ごとに違う、それこそが中小企業の魅力であり、強みでもありますので、「中小企業の魅力はこれ」と一概に言うことはできませんが、上記のものは概ね共通する魅力ではないかと思います。
これに加えまして、(当然かも知れませんが、)学生さん目線では「自分を大事にし、成長できる環境があるか」もあると思います。これも、「経営者と社員の距離が近く、部門間・チーム内の一体感が強い」、だからこそ、社員を大事にし、一緒に成長していく、ということになるかと思います。
専門学校は進路が明確になっている学生さんも多いと思いますが、もし就職先で悩まれている方がいましたら、会社の「規模」や「業界」「業種」「取り扱い製品・サービス」だけではなく、その企業(理念や、創業の経緯・歴史、経営者の想いなど)、あるいはその製品・サービスに「共感するか」もみていただけるように伝えていただければうれしく思います。
製品・サービスだけを見ていて興味がわかなくても、その裏にある「なぜつくられたのか」「どうやってできたのか」「それがどう社会に役に立っているか」を考えるだけでも、その企業の見方は変わってくるのではないかと思います。そのためにも、インターネット等で調べるだけではなく、ぜひ実際に企業と接していただければと思います。
実際に、上述の「東商リレーションプログラム」で中小企業を訪問した学生さんからは
「チームで協力して仕事をする楽しさとやりがいを知った」
「ひとつひとつの製品に魂を込めて製作している姿に感銘を受けた」
「常に社会情勢に対応しようとし、失敗を恐れずに努力する理念に共感した」
「もっとお客様に喜んでもらうためにはどうすればいいかを常に考えている社員の姿勢にひかれた」
といった声が聞かれました。
既に各専門学校で企業との連携は進んでいると伺っていますが、ぜひ学生の皆様に、企業を実際に訪問するなどの機会を少しでも増やしていただけると、私共としましてもありがたく思います。
東商リレーションプログラム
https://www.cci-job.net/contents/relation
(メールマガジン第22号(2022.2.21)に掲載)