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専門学校での経験をいかして
「おやさいクレヨン」を開発2024.03.11

ヒット商品「おやさいクレヨン」を開発した木村尚子さんは、専門学校のご出身。
おやさいクレヨンの色味には、りんごやゴボウなど、野菜の素材の色が生かされており、原料には規格外や、加工時にカットされて捨てられてしまう部分の野菜が使われています。
今では韓国や中国、台湾、アメリカなどでも販売され人気商品となっている「おやさいクレヨン」。その誕生には、自身の小さい頃からの体験と、専門学校で学んだ経験とスキルがいかされているという木村さんに、卒業した青森県のS.K.K.情報ビジネス専門学校でお話を聞きました。

「おやさいクレヨン」はどうやって生まれたのですか?

小さいころからクレヨンで絵を描くのが好きだったのが原点です。
両親が離婚したり、母が不在で祖母と二人暮らしをしたり、家庭環境が複雑だったこともあって、ひとり家で何かをしていることが多かったのです。それが嵩じてデザイナーになりたい、という気持ちが強くなり、高校卒業後はデザインを学べる専門学校に進学しました。
専門学校ではデザインはもちろん、デザインに必要なソフトの使い方、ビジネススキルなどを学びました。
その後、制作会社でデザイナーとして働いている間に、結婚をして、2004年に妊娠、出産。子どもが0歳のときに離婚をしたので、その後はシングルマザーとして苦しい生活をしていました。
それでも2013年に「子どもとの時間を優先したい」とデザイナーとして独立したのです。当時、訪れた藍染の展示会でその色合いの美しさに心を奪われ、そこから「野菜の天然の色を活かした文房具が作れないだろうか?」とアイデアが浮かび、試行錯誤が始まりました。
資金面では、行政の補助金支援を受け、実際の制作では愛知県のクレヨンメーカーさんや地元のJAさんの協力を得ながら、野菜の素材の色をいかしたクレヨンを作りました。
その後はあれよあれよと、人生が変わっていきました。ちょうど昨年で起業して10年を迎えたのですが、よく10年続いたなと感慨深いところもあります。

どうして専門学校を選んだのですか?

中学生のときから、将来デザイナーになりたいと思っていて、きちんとデザインを学びたかったので、本当は美大に行きたかったのですが、家庭の経済的な事情で美大は無理でした。高校時代にそれがわかって、やる気がなくなって一時はふてくされていたんです。
「目的もないのに高校で勉強しても仕方ない」と思って、勉強もしてなかったし、高校3年生のときは就活もしました。
デザインとはまったく関係のない職種の面接を受けに行ったりもしたのですが、どこにも受かりませんでした。それはそうですよね、やる気がないんですから。
そんな中、離れて暮らしていた父に久しぶりに再会しました。父には別の家庭があったのですが、「専門学校なら学費を出してあげるよ」と。それで地元のデザインやビジネススキルが学べる専門学校に進学しました。

専門学校時代に学んだことは?

社会人として生きていくための礎というか、基礎的な技術を学んだと思います。
ちょうど当時は、Windowsの創成期で、家庭用のMacも出始めて、インターネットも始まったばかりの時期。イラストレーターやフォトショップというソフトなどを初めて操作をして。パソコンのキーボードは触ったことがなかったんですけど、1年もかからずカタカタと打てるようになりました。こういったソフトは今もデザインの現場で使われているので、リアルに私の仕事に役立っています。
学校の課題で、「自分のお店を出すとしたら」というものがあって、そこでどういう商品を作るとか、そういうのを考えるのがとても楽しかったのを覚えています。そのときは「マニキュアを開発する」というアイデアで、色の名前に風景の名前とかを当てはめていったんです。だからやっぱり色が好きなんだと思います。
デザイナーとして自分の中のイメージを形にできるようになったのも、専門学校でさまざまなスキルを学んだことが大きく影響しています。
当時、木村さんを教えていた鈴木先生(現・学校法人SKK理事長)は、「おやさいクレヨンは知っていたけれど、木村さんだとは知らなかった。当時から熱心な生徒でした」とのこと。

デザイナーとしてアイデアの源泉はどこから?

まずそもそも美術が好きなので、美術館での展覧会などにはよく行きます。
それから、犬を飼って10年以上経つんですけど、朝夕の散歩が日課で、その時は結構な距離を歩くんです。散歩の途中で、「いいな」と思った風景を撮りまくっています。普通に歩いているだけだと気が付かないんですが、犬と一緒にゆっくり歩いていると、いろいろな瞬間を見られるというか。そうやって撮った写真があとで、仕事のイメージのヒントになったりしています。

専門学校への進学を考えている中高生にメッセージをお願いします。

専門学校に行くと、モチベーションを維持できるかどうかが問題になると思います。楽しい時期なので遊びの誘惑も多いでしょうし、大学ほど課題とかがない場合も多い。
私も専門学校時代に、そういう時期がありました。私の場合は、情熱の持ち腐れというか…。入学直後のクラスの最初のオリエンテーションで、私は「将来は日本を代表するようなデザイナーになります!」と宣言したのですが、クラスのみんなは割と冷めていて、「どうしてみんな燃えていないんだろう?」と思っていたのは、よく覚えています。
私は周囲との温度差を感じていましたが、今はいろいろなコミュニケーションツールがあるので、地域の差にとらわれず、自分のやりたいことのために仲間を集めたり、やったことを発信できます。そういう意味では、いい時代になったと思います。
ですから、炎上とか、現代ならではのトラブルには気をつけつつ、やりたいことがあれば、専門学校時代から、どんどんチャレンジをしてほしいです。今の世の中、何が拾われるかわからない。チャンスはあちこちに転がっていると思います。

(プロフィール)
木村尚子(きむら なおこ)

1979年、青森県青森市生まれ。S.K.K.情報ビジネス専門学校卒業。県内の情報誌制作会社などを経て、デザイナーとして独立。2014年「おやさいクレヨン」を発売。同年、mizuiro株式会社を設立。デザイナーとして活躍しながら、現在も廃棄されてしまう野菜を使った商品開発などにも携わっている。