Z 世代の価値観を捉える「パーパス・ブランディング」とは?谷口 優(株式会社宣伝会議 出版担当・取締役 社会情報大学院大学 准教授)
マーケティングの世界では今、デジタルネイティブであるのはもちろん、スマホネイティブ、SNS ネイティブの Z 世代(1990 年代後半から 2012 年生まれ)が消費の主役として注目されています。皆さんが接している学生の方たちは、まさにこの Z 世代だと思います。
この世代にはデジタルリテラシーの高さだけでなく、社会課題に対する関心が高いという特徴もあります。例えば、SDGs に関する認知度は 10 代が最も高い(男性:75.9%/女性:72.2%)という結果もあります【電通発表「SDGs に関する生活者調査」】。
皆さんは、教育や学校プロモーションに際して、この Z 世代の価値観を踏まえたコミュニケーションが求められているわけですが、彼ら・彼女たちが重視することのひとつに「組織のパーパス」があります。
単純に日本語に訳せば「目的」となりますが、ここでいうパーパスとは、なぜその組織が社会に存在する必要があるのか?その「理由」のことです。
若者たちは学校を選ぶ際、そして就職先を選ぶ際、このパーパスが明確であることはもちろん、それが自分の価値観に合っているかを重視する傾向が強まっていると言われています。パーパスがあるからこそ、組織はステークホルダーとの関係を強固にするための求心力を維持できるという考え方です。
いきなり「パーパスで学校を選ぶ」ということにはならないかもれません。ただ、就職指導の面においては、学生さんは社会課題に対する意識、自分の価値観と合う存在意義をもった組織への就職を希望されるケースは今後、増えていくと思います。
自分が選ぶ職業・職能の社会における存在意義とは何か?といったことにも重視するようになるでしょう。コロナ禍において、厳しい状況が続く飲食や観光業界などを見ると、専門職に就くことが、逆に社会環境の激変に対応しづらい側面も見えてきたからです。
オーストラリアの企業のこんな事例を聞きました。イベントの舞台製作を手掛ける Stagekings という会社は、コロナ禍を受け 2020 年 3 月にその年の全ての仕事と収入を失ったそうです。しかし、職能を生かして工具を使用せずに組み立てられるホームオフィス用家具のデザインと製造に事業ドメインを変え、3 カ月で約 1 万個の製品を販売し、全従業員を再雇用することができたとのこと。
専修学校選び、あるいは専修学校の学びの中においても、表面的な「職業」ではなく、その職業を通じて提供しうる価値の本質を考える機会があってもよいのではないだろうか、と考えます。
(メールマガジン第5号(2021.6.21配信)に掲載)